Boston Globe September4, 2007

新学期

勉強の壁に新鮮な理解を!勉強に遅れをとっていた子どもの中には学校に戻るのを楽しみにする子が!

By Barbara F. Meltz, Globe Staff  |  September 4, 2007

コンコードに住むEllie Honanは今週4年生に進級するのを楽しみにしている。それは、Ellieにとって今までになかった感覚だ。昨年の9月は不安でいっぱいだった。学校に行くということは、Ellieにとって頭が悪いと感じに行くことを意味していた。

Ellieの母親Christineは、「2年生は大変な年だったけど、3年生になってEllieは痛々しい程シャイで引っ込み思案になっていました」と語る。

教師達は、教室でEllieが途方に暮れているように見えたと報告した。Ellieは空想にふけり、決して手を挙げることがなかった。検査で、Ellieは読解力に問題があるが、頭の良い子であることが明らかになった。そこで学校が専門家を提供したところ、Ellieはスペル試験でも90点台をとる程の改善を見せ始めたのだ。

3年生になり専門家の援助が終了したが、問題は持続した。Ellieの口癖は「ただ分からないの」だった。宿題にはいつも、涙と何時間もEllieの隣にかかりっきりになる母親がつきものだった。

Ellieは、 ページのトップから下部に至るまでの情報を保持する能力を指すワーキングメモリーの問題を抱えていることが判明した。ワーキングメモリーとは、優先順位・ 整理・頭の中で情報をシフトするようなことに優れている課題実行を指す思考能力、実行機能の部類である。その能力は、幼少期から成人期にかけて継続的に発 達するものだ。

実行機能という言葉を耳にしたことがないあなた、いいですか!実行機能は、教育界に突如姿を現したものなのです。

マサチューセッツ州ブレインツリーのハーバード・バンガード・メディカル・アソシエイツ教育研究センター(Harvard Vanguard Medical Associates Educational Assessment Center)コーディネータであるKevin, D. Kennedy氏は「整理が出来ない、計画性に乏しい子ども達など、これまでになかった程多くの患者が紹介されてきています」と語る。患者数が多すぎるため、センターでは小学生・中学生・高校生向けの実行機能ワークショップを来年1月から開催する計画を立てている。

実行機能の概念は、神経学研究において脳の前頭葉に位置する活動を説明する為に、約20年前に初めて明るみに出た。現在では、心理学者の間で、宿題をすることや課題を完成させるのに困難を経験する子どもを説明する為にその言葉が用いられている。

ちょっと待てよ。子どもというのは何十年も前から宿題に四苦八苦してきている。子どもはいつまで経っても片付けが出来ない。なぜ専門家たちは急にそのことにラベルをつけたのだろうか?

児童病院の臨床心理士Michael Neessonは「要因のひとつは、より高性能な神経心理学テストで、広範の学習や行動障害ではなく、特定の能力欠陥を正確に示すことが出来るようになったことにある」と述べている。

懐疑的な人達はそんなことを信用しない。これは親の問題で、障害がある子ども達の問題ではないと言うのだ。

親の感情を害するのではないかとの不安から記録に残したくないとする地元の教員達は、「実行機能というラベルは上を目指そうとする親の不安を緩和する方法のひとつ」だと語る。National School Leadership Networkの重役であるSpephen Gould氏は、「保護者が期待するほど良い成績を子どもが修めていない時に保護者は理由を求めるものだ」と語っている。

Gould氏は、実行機能をリアルなものと考えない各地の教員達から耳にする不平を説明している。Gould氏自身は実行機能をリアルなものとしてとらえている。Gould氏は多くの生徒に影響を与えている問題を解決する為に校長らと共に取り組みを行っている。実行機能はそのリストのトップ項目だ。

Gould氏、教育者、そして心理学者はここ5年 間で増加している学問的需要は、生徒たちが事実を記憶する・思考を整理する能力を維持することだ。一見学習障害や行動障害に見えるものも、実は、成長を必 要としている神経学的配線であるかもしれない。子ども達の中には成長の中で獲得したり、うまく通り抜けたりする子がいる。一方では、Ellie Honanのように気持ちの面ではもがき続けているにも関わらず学業的な需要が追いつかない子ども達もいるのだ。

Ellieの母親は、「最初のうちは、Ellieがただうんざりしているのかと思っていました」「でもそこで、学習の問題であるということに考えが及んだのです。それでも、Ellieが抱える問題はどんな診断にも当てはまりませんでした。私はインターネットでワーキングメモリーに関する情報を見つけました。それはまるでEllieにまぶしい光が差したかのように衝撃的なことでした。」と語っている。

 

幼い時期から、沢山のものが要求され過ぎている

レキシントンの教育心理学者Lynn Meltzerは、国内で日々の学業成績と実行機能を最初に関連付けた人物の一人だ。Meltzer25年間子どもたちに学習障害の診断をつけてきているが、3年前にテストで良い成績を修めてもプロジェクトや作文で思考をまとめられない子どもが来院することに気付いた。その子どもたちの多くがADHD等の学習・行動問題を抱えていたが、中には診断可能な学習障害を持たない子どももいた。

Metlzerは これらの子どもが実行機能の弱点を持っていると説明し始めた。彼女の説明は以下の通りだ。「山をイメージしてください。もしあなたが頂上に立って見下ろし たら、山全体が見えます。もしあなたが山の麓付近から見上げていたら、枝や葉が見えます。実行機能は、全体的な思考から詳細の思考を自由に行き来すること が出来るようにするものなのです。」

5年生が課題をしなければならない場合を考えてみます。子どもは情報収集に長時間を費やしますが、パソコンの前に座ってレポートを書こうとする時には、12文しか思い浮かびません。

学習に問題がある子どもの為のソフトウェアを開発している学習・発達研究所(Research Institute for Learning and Development)の設立者であり所長のMeltzerは「情報はすぐそこにあるの。彼はただ、それをレポートとしてどうまとめたら良いかが分からないだけです。」と語る。

マサチューセッツ州Actonのダグラス学校の校長Chris Whitbeckは、「小さな子どもたちの多くがMCASなどの統一テストで高得点を獲得出来るように教育されているが、要求を満たすような整理能力が身についていません。」と語る。元科学教員は今のカリキュラムが「我々は7年生が実験室でレシピを渡されてその手順に従うような参加型科学から、課題と材料を渡されて自ら何をすべきかを考える思考型科学に移行している」としている。

マサチューセッツ州Needhamで幼い子どもたちと関わっている心理学者Andrea Mastermanは、「子どもの発達と不一致な学校が実行機能の問題を引き起こしている可能性が大いにあり、幼すぎる子ども達に多くの要求を投げかけ過ぎることが短絡化を招くことがある」と話す。

Mastermanは、「3年生の子ども達がプロジェクトとは何かを理解する前の段階で長期プロジェクトを課している学校をいくつか目にします。」「12年生が月曜日の朝に週課題一式を渡されるのも目にします。12年生児はまだ、説明をする術を持っていません。どうしろというのかしら?」と語る。

使われていない能力を磨く

Ellie Honanは良いケースです。両親は、Ellieの学業困難が自己達成しつつある予言のようになっていた様子を目の当たりにした。

Ellieの母親は「彼女が賢いことは分かっていたの。」「彼女をそう説得することが出来なかったし、学校での成績が悪くなるにつれて、彼女自身が出来ないと余計に信じ込んでいました。」と語る。

Honan家は、Needhamで開業しておりEllieの問題をワーキングメモリーの観点から見たNewton学校の心理士David Gotthelfを頼った。Gotthelfは、スウェーデンのコグメド社によって開発された、子どものワーキングメモリー容量を向上させる25セッションのソフトウェアプログラムを始めさせた。

「こういう子ども達を数えきれない程見ています。」とGotthelfは言う。

Gotthelfは、「現代の生徒は記憶力をトレーニングする機会に恵まれていないのです。」「子どもたちは、幼い頃からTV、ビデオ、インターネットからの情報攻勢に遭っています。簡単に後戻り出来たり、再生出来るのだから記憶をする必要がありません。旧式の記憶力は子どもたちのレパートリーから消し去られました。」と語る。

新しいラベルであり、何と呼ぶかという一致した見解がない実行機能の弱さは、障害でも症候群でもなく、どの診断文献の掲載されていない。

マサチューセッツ州Newtonの神経心理学者Penny Pratherは 「その子が遺伝的に欠陥を持っているということはない。」「どちらかと言えば、もしその子が備えているより高いレベルのスキルを使うように指示したら、そ のスキルが発達すべき機会を得ることはない。その子どもは求められる行動が出来ずに、徐々に障害を持っているかのように見られてしまいます。」と語る。

Meltzerの団体ResearchILDではこの夏、中学生・高校生を対象に実行機能能力の2コースを提供し、日々のカリキュラムに整理・記憶ツールを組み入れる“成功への活力”という試験的プログラムを開発した。

昨年のこの時期にChistine Honanは「Ellieが学校に戻ることを考えると髪の毛が逆立つ思いでした。」と言う。今年は活気づいたEllieは「4年生に進級するのが楽しみ。今までで最高の年になると思います。」と語っている。

Contact Barbara Meltz at meltz@globe .com.http://cache.boston.com/bonzai-fba/File-Based_Image_Resource/dingbat_story_end_icon.gif

© Copyright 2007 Globe Newspaper Company

和訳:コグメドジャパン